ある朝、いつもの歩きなれた道を歩いていると
突然、大きな石が道にのっかっていた。
その石は不思議な音を発していて、
近づいて、耳をすますと、
水の音も聞こえていた。
しばらく音を聞こうと、
その石になんかかり、
目を閉じて、
座ってみた。
すると、その水の音は波の音に変わり、
それにつられて、
心もゆらゆら
ゆらゆらゆらゆらしてきた。
目をあけると、なぜか本当に海の上で、
舟に乗り、
太陽が暑かった。
空は広くて、
雲がどんどんどんどん近づいてくる。
波の音がまたはじまる。
ゆらゆらゆらゆらと。
遠くには山があって、
緑が見える。
そこへ、舟は静かに近づいていた。
人の声。
誰かが後ろで歌っていた。
舟の後方を振り向くと、
一人の子供が、
空を見ながら、
雲を追いかけるようにして、
目をつぶり、歌っていた。
声をかけるのもはずかしいから、
しばらく、その歌声を聴いていた。
大きな声
小さな声
と声の大きさを変えながら、
その声は、響いていた。
その子は、目をあけると、
私を見た。
少し、驚いたようだが、
何も話しかけず、
ただ、見つめあっているだけだった。
少し、もどかしくなり、
会釈をすると、
お互い笑った。
静かなやさしい空気がそこにはあった。
緑がまた近づいてきた。

「静かに笑って」

2010.9.5　
Caman Humming Bird 

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